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経済人のコラム 時局寸評

TOP 経済人のコラム(時局寸評) 国民文化祭を通じた「おもてなしの向上」に関する考察

国民文化祭を通じた「おもてなしの向上」に関する考察

 第28 回国民文化祭は、平成25 年1月より11 月まで通年開催され閉幕しました。
平成19 年に山梨の開催が決定されてから長期にわたる期間を通じ、様々な事業の準備や実施に携わった県・市町村・文化団体をはじめ関係者各位のご努力に敬服し感謝致します。
 山梨経済同友会おもてなし部会は、山梨県が策定した「おもてなしのやまなし観光振興条例(平成23 年12 月)」を踏まえ、平成24 年7 月に提言書『山梨のおもてなしの向上を目指して~「富士の国やまなし国民文化祭」への提言~』(以下、「提言書」という)を策定し、発表致しました。
 爾後、経済人の立場から国民文化祭における「おもてなし」について検証し意見をまとめました。

1.「成果検証報告書」について

 文化祭終了後、平成26 年3 月に公表された山梨県実行委員会の「成果検証報告書」(以下「報告書」という)では、山梨県主催事業(ステージ実施事業、振興事業、通期事業、提案事業)、市町村主催事業、関連事業(文化庁、国際交流、記念事業、応援事業、オープンカレッジ)についてそれぞれ通年事業を総括し、広報・誘客・おもてなしの取組について284 万人超(うち県外者113 万人)の来場者に対し、四季を通じて本県の魅力を十分に発信出来たと結んでいます。
又その成果として、山梨県の文化の再認識、活発で多彩な文化交流、地域伝統文化の再生と継承、裾野拡大、次世代育成、文化活動の活性化と向上が図れたとしています。
1 年間という長い期間を通じて何の問題もなくスムーズな運営ができたことは、高い評価、おもてなしに値すると思います。

2.国文祭の結果について

 山梨経済同友会の「提言書」では、やまなし国文祭が「おもてなしの向上」を伝える絶好の機会と捉え、「基盤整備・交通」「産業振興」「福祉・健康」「教育・文化」「ふれあい・発信」の5 つの分野に分けて「おもてなしの向上」に関わる取組の提案を行いました。実際に多くの提言項目に取り組んでいただいたことについて、お礼申し上げます。
「報告書」の結果内容をみると、期間中の事業について県民一丸となって取組み、各事業それぞれ大成功であったと感じます。
特に心配された開催事業費14 億円については通年開催にも拘らず先催県の短期の事業費と同程度であり、243 億円の経済波及効果を生むという高い費用対効果が得られました。これは驚くべきことで、まさに県民総参加の手作りの文化祭、県民総ぐるみのおもてなしであったと評価できると思います。

3.おもてなしの定着化に向けての意見

 おもてなしを今後さらに定着させていくために、次の取組を進めていくことが望まれます。

(1)子供たちの「地域愛」の醸成の継続を
 地元特有の自然と文化が育む地域コミュニティと、「おもてなしの心」による地域の繁栄の重要性は言うまでもありません。しかし、山梨も少子化が各地で進み、関心も多様化し、祭事など文化の継承の担い手確保が困難となってきています。
 今回、国文祭を通じ、子供たちも食文化やお祭りなど季節ごと、古来からの地域行事に触れて大切な「地域愛」や「おもてなし」を認識し受け取ってくれたのではないかと思います。
地域文化教育の充実につながる子供たちに対する「地域愛の醸成」の取組の継続を期待します。

(2)文化人との交流によるレベルアップの継続を
 今回のイベントを見直し繋げて、お金をかけることなく、文化人と継承者との継続的な交流が地域活性化に繋がるような催事を期待します。

(3)「県民文化祭」での取組継続を
 文化活動の結果文化人が山梨に住んでくれれば、定住者増加の効果やイメージアップ、経済波及効果もあります。
従来からの「県民文化祭」でこうした視点からの取組を期待します。

(4)文化交流に伴う定住促進を
 箱物ではない無形の文化、音楽や芸術・伝統などを中心に文化面での交流や県外からの定住促進を積極的に発信して、定着化の促進を図ることを期待します。この広がりは好影響、好循環を生むはずです。

(5)山梨の固有の文化を見せる(魅せる)ことによるおもてなしの醸成を
 今後は「山梨の文化を守り繋げる」ことに加えて「山梨の文化を見せる(魅せる)」ことも極めて重要と考えます。
 リニアによる時短効果によってグローバル化が進み、商業圏の拡大に伴い文化圏の拡大が当然予想されます。東京圏に中京圏・関西圏・世界が一気に一体化します。
山梨の文化の特色を守り、誇り、存在価値をアピールすることもこれから必要条件になるでしょう。
方言など形のないものも含め、そこにしかない文化は、強みでもあり、魅力的なものです。
そこにはそれぞれ「おもてなしの原点」が存在します。
山梨の固有の文化を見せる(魅せる)ことによってさらに磨かれていくことを期待します。

さいごに

 県は6 月5 日、「県やまなし文化力・つなげる会議」を設置しました。
この会議の意見を基に来年3 月、「文化芸術振興ビジョン」をまとめ、「国文祭を通じて見直された地域の文化を次の世代に継承する指針」を策定するとしています。
 今後こうした県の動きに合わせ、山梨経済同友会も、おもてなし部会の立場から文化行政への新たな提言や具体的な活動の実施などを目指したいと思います。