経済人のコラム 時局寸評
あいさつは度量広げる
大学を卒業し、シェル石油(現昭和シェル石油)に入社した。
初めて名刺を手にした時はうれしかった。
人と会って名刺を渡し、学生とは違うと責任を感じたものだ。名刺を持つことは、組織の一員になったという事を意味する。会社と顧客の間に立って大変な思いをしたが、働いていく覚悟が固まった。
休日は気分をリフレッシュするため、音楽を浴びるほど聴いた。特にジャズが好きで、ジャズクラブや野外ライブにも行った。職場の仲間とも一緒に出掛け、新たな一面を見つける機会になった。
職場は外資系だったこともあり、多様性を重んじる風土だった。悩んでいると先輩が気付き、話を聞いてくれた。悩みを共有してもらえる安心感が、何かに立ち向かうエネルギーになった。
新社会人に自問自答してほしい四つのキーワードを提示したい。
一つ目は、「正しいあいさつができるか」。あいさつは、自分と異なる考えの人を受け入れる度量を広げるための手法でもある。
二つ目は、「良心を社会のために役立てているか」。見て見ぬふりをするのではなく、自分が正しいと思ったことは伝える、行動を起こすことが大切だ。
三つめは、「自分のことを省みる時間を持っているか」。成長するために、一日を振り返って良かったこと、だめだったことについて考えてほしい。謙虚さを形成する時間になるだろう。
最後は、「覚悟を持って仕事に臨んでいるかどうか」。仕事とは、会社に対してだけでなく、職場の仲間や取引先、お客さまなどに対しての役割も担うことを意味している。きちんと理解し、覚悟を持って任された仕事をやり切ってほしい。