沈思黙考のすすめ

出澤敏雄

(山梨経済同友会代表幹事/日本銀行甲府支店長)

 1998.05.13

 

 各々方、暫し沈思黙考されたい。

 

手垢に塗れた軽佻浮薄な言葉の遊戯を止めて、次の事柄の意味するところを自分の頭で考え抜いてみてはどうか。

 

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偶さかこの地に生を受けたというだけで、何故日本のことがかくも気に掛かるのか。

経営者であれ、サラリーマンであれ、政治家であれ、教師であれ、我々は明日の世代にどのような日本を残そうとしているのか。

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如何に言葉を尽して答えても、どこか嘘らしいところが残る難しい問だ。

 

かくて、我々は再び言葉の遊びに向かい、政府の総合経済対策を論評し、景気の先行きを占い、経営計画を語る。

 

勿論、この世の中、哲人だけでは成り立たないが、さりとて皆が皆、景気を占うエコノミストの御託宣に有り難がって銭を払うような、持ちつ持たれつの優しい生活人ばかりでは、我々はタイタニック号の乗客になってしまう。

 

 今日ほど、歴史観を持った哲人的指導者の登場に思い焦がれる時はない。

 (中西輝政氏の書物に啓発されて)