提言書 |
教育委員会 今 求められる公立高校の制度改革 |
1.提言にあたって 今後わが国の教育に求められる目標で最大のものは『グローバルなレベル』での人材を育てることであろう。『成長したい、進歩したい、強くなりたい』という意欲を潜在的に持つ若者は多い。その意欲を開かせ、大輪の花を咲かせることが教育の本義である。教育の最も大事な役割は、人に人生航路の荒波に臨む姿勢をインプットすることであり、『自力航海』へのマインドを埋め込んでやることだ。別言すれば『己の生を愛する人を育てる』ことに他ならない。 ◇我々の取り組みテーマの選択 ◇今回提言のテーマ 教育委員会 委員長 田中好輔 2.提言 今求められる公立高校の制度改革
【II】これから求められる高校教育の価値基準 (1) 人の自分史を飾れる高校 高校時代を灰色にしてはならない。友と師を得、志を育み、人生の礎となる、青春の輝く一コマであって欲しい。それを演出し、生徒を惹きつけるのが高校の特色、校風であり、教師の魅力である。生徒にとって、好ましく適した高校を志願し、合格ラインをクリア出来れば自分が望む高校に入学できる制度でなければならない。 (2) 個性・特色を作り、その『高み』を築く 大学受験に焦点を据えるだけが求める姿ではない。職業や就職を視野に入れた地域主体の高校というあり方も大切である。ただ、漫然と存続させるのでなく、多様の中で個性的かつ高いレベルを持つ特色作りが求められる。狭い県内を学区により細分化するのでなく、需要と供給の出会う場を大きく取らないと、特色と競争のレベルは高まらない。区割りの枠を外すことによって、『個性』『特色』を磨き『高み』を築くべきだ。 (3) 切磋琢磨を通じて志操堅固な次世代リーダー、世界レベルに繋がる人材の育成 大学、あるいは更にその上に進み、志を果たそうという生徒に、その望みをかなえる足場を提供する。単なる優等生の受験術教育でなく、厳しい切磋琢磨という環境の力を使いつつ、自分探しの出来る人間教育をすることが求められる。 (4)避けられない市場原理というプリンシプルの受け入れ 高校は義務教育の先のステップであるから、一般の市場財の側面を強く持つ。それ故に、競争、競い合いに基づく優勝劣敗の市場原理や『費用対効果』というプリンシプルを受け入れることが不可欠で、需要者たる生徒、受験者、その保護者等の真の求めに応ずることが大事である。卒業後の進路の先には厳しい実社会の求めがある。これが重視されないと、今後益々高校教育の公的供給は急速にレゾンデートルを失う。況してや形式本位の『結果平等』に偏重した聖域として、社会経済と無縁な所に留まることは許されない。 【III】変革のための方策 (1)『学区制』『総合選抜制』の廃止 1967年に導入された『学区制』と『総合選抜制』は一定の成果を収めたが、すでに過去の遺物と化し、その役割を終えた。むしろ生徒数が不足する時代には弊害が多くなる。 狭い県内の地域隔壁を外して底辺と選択の幅を広げ、また競争原理を強めることにより高さのニーズに応えるべきである。行きたい高校を自分が選ぶことの人間教育的効果も無視できない。 (2)学校経営者としての校長の権限強化 高校の特色作りと経営は、中央集権的官僚組織から切り離し、現場管理者としての校長に任せるべきである。以下の権限を大幅に委譲し、それと一体で校長は経営責任を負う。 1)人事権(適者要求権、採用権、査定権、任免権) 2)ビジョン、理念、特色の提示 3)予算要求と行使権 そのためには、校長志願者に学校経営に関する研修訓練を施すと同時に、経営感覚を備える民間人の登用にも道を開くべきである。 これらによって、今後公立高校の収容力が減容を迫られる中で、適切な施設配置と適材を揃え、教育成果の向上を図る必要がある。尚、校長の独断専行を監視する『学校評議員制度』を、卒業出身者や教育界とは異なる分野の指導層を主体に構成することも意義がある。 (3) 特色ある多様な高校作りの振興 上述の校長による高校の特色、ブランド作りを支え、元気付ける仕組みが必要である。大学受験指導を重点指向しようとする高校には、学区拡大にあわせた『寄宿制』の一部導入も積極的に取り組むべきテーマであろう。それらによって、広域性を持つエリート校を作ることに憚りはない筈である。これらのほかにも、中高一貫教育という特色をもつもの、『郷土研究』を重視するもの、特色ある職業教育を強みとするもの、スポーツや色々な特技を生かせるコースに特色を持つもの、身障者、自閉症、登校拒否児等、弱者への教育を指向するもの等々、校長の理念と企画を尊重し、その振興を図るべきである。 (4) 県財政・予算面での配慮 地方財政が『総花的』を許されない状況下、抽象・迂回性の高い教育予算は陳情に乗りにくい。そういう地方政治的に算盤に乗せにくいという側面を持つだけに、以下の点を重視すべきである。 1)一部市場原理を導入し、高校の自主財源確保の制度へ 2)公立高校の授業料は、『一律公定』から『受益者応能負担』への発想転換を 3)上記の企画立案、執行権と責任を校長に委譲 4)キャンパス再編は、遊休化資産の民間への売却、スクラップ&ビルド方式で資金確保 5)教員離脱者の一般公務員枠編入(福祉、文化、研究面等)の拡大 (なお、ここに提言書としてまとめたテーマについては、事態の推移に合わせて、引き続き重大な関心を払ってゆく所存であるが、この後、次のテーマ、即ち『学校教育と企業との交流促進』に軸足を移しながら、論議・活動を進めたい。)
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